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集合知、三人寄れば文殊の知恵

集合知という話をすると、そこから想像するのは三人寄れば文殊の知恵、ということわざがイメージしやすいかもしれません。一人では考えつかなったことが複数名で考えると、いろんな意見が出てくる そんなイメージで使われてると思います。

インターネットの登場によって、三人での会議は頻繁にできるようになったし、それが十人でも百人でも会議をしようと思えば、できる時代になりました。今まで想像もつかなったくらい、情報共有は低コストで簡単になっています。その中で、考える集合知とは?どんなことなんでしょうか?

三人寄れば的な規模の理論のような話は、普通の組織や企業の論理と同じかもしれません。通常、ものを作るときには規模の経済が働くものです。大量生産すれば安くモノが作れ、競争力が高まる。ではなぜあらゆる企業がどんどん巨大化しないのか? あらゆる分野が超巨大企業ばかりにならないのか? もちろん、大企業ばかりの産業分野もあると思いますが、そればかりではありません。

これを説明したのが、1991年ノーベル経済学賞を受賞したロナルド・コースの提案した「コースの天井」「コースの限界」なる理論です。コースは、世の中のものは財産権さえ明確に決めておけば、あとは関係者の自発的な取引ですべて丸く収まる(かなり極端なまとめだが)、という「コースの定理」が有名ですが、企業の存在意義として取引費用の最小化を挙げた業績も大きいです。

そしてその理論の中で、かれは企業や組織の規模についても検討し、組織規模は、情報のやりとりの限界で制約されることを指摘しています。組織内では人々や部局同士が情報交換しなくてはならない(そうしないと組織の意味がない)が、組織が大きくなれば、情報交換の手間も増える。そしていずれ、コミュニケ-ション費用が規模拡大のメリットを上回る。人を組織に一人加えても、規模のメリットが内部調整の手間で相殺されてしまう。そこがコースの天井となります。

組織内のコミュニケーションというとわかりにくいかもしれませんが、企業の人ならこれは会社の管理部門だと考えればわかりやすいかもしれません。人事や経理、総務などの管理部門は、営業サイドから見ればめんどくさい書類の作成や様々な手続きを増やすような存在かもしれないが、一方でそれがないと会社自体の経営(運営)がうまくいかないというのも理解しています。管理部門は、基本的には社内の各種コミュニケーションを担当していて、会社全体の規模が大きくなると、管理部門も大きくなり、管理体制に労力(コストも含む)を割かねばなりません。

文殊の知恵の話でも同様のことがいえます。高校や大学でサークルを運営したり、会社でちょっとした会議を運営したような経験があれば、なんとなくわかるかもしれません。人数が増えるにつれて各種の調整の難易度が増していきます。三人が一斉に集まるのはさほど調整に時間がかからないが、十人が集まろうとすると、そもそもスケジュール調整の段階から難易度が増します。さらに実際に集まったあとでも、会議の方向性を決め、議論をとりまとめ、十人それぞれの意見や主張をちゃんと聞き、それをまとめて一つの答えを作っていくのはとても難しい。十人十色とはよく言ったものだ、みんなそれぞれ意見を持っている。ましてインターネット以前の時代では、自発的に数十人を集めるのもかなり難しかったはずだ。何らかの権限を使って強制的に集めるしかない。集まっても、集団による意思決定に全員の意見をまとめ上げるのは、かなり難易度が高いはずです。

現在は、インターネット(SKYPEやZOOM、ベルフェイスなどの通信手段など)の発展により、集合して意見交換もできるようになったが、もともと集合することが難しかったから、その後の意思決定については、まだまだ研究成果が増えてきていない。

メカニズムデザインがここ数年脚光を浴びているのも、全員での意思決定や多数の中から一人を選ぶなど意思決定のメカニズムがここ数年明らかに変わってきたためだと推察されます。

今回のオークションラボでは、経済学的な意思決定のメカニズムと脳科学的な意思決定のプロセスを多面的な要素から検証できる機会になると思われる。ブロックチェーンなどの今までなかったような意思決定を行う機会が増えていく中で、脳はどう考え、仕組みはどう機能するかを考える機会になればと思っています。

弊社グループのオークションにおいても、最高の条件を出すためには、競りの仕組みだけではなく、それぞれの参加者の思考(例えば、実需(この不動産がいい)なのか?事業(利益が出そうな不動産がいい)なのか?)によって、行動特性は変わってきます。

「決める」という行為は、とても難しい行為です。そのメカニズムの探求の一助になればと思います。

 

執筆者
今井 誠(いまい まこと)Auction Lab主宰

1998年、金融機関からキャリアをスタート
2001年、不動産オークション事業に関与し始める
その後、不動産オークションについて様々なオークションモデルを実践。
不動産ファンド等を経て、現在は、オークション理論をベースに不動産オークションを再構築し、その他「決め方」に関連する研究を行う。

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