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コラム

坂井豊貴「マーケットデザイン」①②経済学のものづくり

2013年5月に日本経済新聞の「やさしい経済学」コーナー(通称「やさ経」)で、坂井豊貴氏がマーケットデザインに関する全10回の連載を寄稿しました。ここでは日本経済新聞社および同氏の許可を得て、その元の原稿を5回に分けて掲載します。新聞に掲載されたものとは一部の表現が異なっていることがあります。

マーケットデザインは、オークション理論を含む、大注目の学問領域です。2012年にはこの分野への貢献を称えられ、アルヴィン・ロス氏とロイド・シャプレー氏にノーベル経済学賞が与えられました。経済学の先端知は、ビジネスや政策と直結しています。

第1回 経済学的な「ものづくり」(2013/5/7)

日本人は「ものづくり」という言葉を好みます。この言葉から多くの人が想像するのは、職人や技術者、町工場や工業地帯など製造業に関する事柄ではないでしょうか。

確かにこれらはモノを作ることに関係しています。物理的に何かを製作する「理工的ものづくり」と言ってよいでしょう。しかし、ものづくりは物理的なモノにしか適用できない概念ではありません。売買のルールなど社会的な仕組みに対しても使えます。

昨年のノーベル経済学賞は、マーケットデザインの基礎と実践への貢献を理由として、アルヴィン・ロスとロイド・シャプレーの両教授に与えられました。マーケットデザインとは聞きなれない言葉でしょうが、これは「経済学的ものづくり」に関する学問分野です。

理工的ものづくりでは、製品の開発や改良を行います。しかしモノがどんなに優れていても、それが有効活用できる人の手に渡らなかったら、製品としての価値は生まれず、社会を豊かにすることはできません。

あるモノが優れていることと、その配分が優れていること、つまり持つべき人がそのモノを有していることとは異なります。そこで、優れた配分を実現するための社会的な仕組みを考案することが必要になります。それがここでいう経済学的ものづくりです。

モノと人との優れた組み合わせをどうやって見つけていくか。更には、人と人、あるいは人材と部署などをどう組み合わせるか。マーケットデザインではそのための解決法を、市場あるいは市場的なアイデアを使って探していきます。

例えば、1990年代以降、日本を除くほぼ全ての先進諸国では、周波数の免許は、裁量行政による割り当てではなく、オークションで売買されてきています。その目的は効率的な資源配分を導き、収益を上げ、透明性を確保することです。

しかしそれら目的を実現するためには、オークションのルールを入念に作成する必要があります。思い付きのルールでは成功しない。こうした課題に対処するためマーケットデザインの様々な手法が開発されてきました。

 

第2回 様々なオークション方式(2013/5/8)

オークションは様々な財の売買で活用されています。そのメリットは多々ありますが、買いたい人が一堂に会し、迅速に取引をするという点は特に重要です。

一堂に会するということは、高い価値付けをする人に買われる可能性が高まることを意味します。なお、ここで一堂に会すとは、実際に人間が集まることだけでなく、オンライン上での参加を含みます。

そして迅速ということは、参加に関わる費用の削減のみならず、生鮮食品や花弄など鮮度が重要な商品の販売、あるいは瞬時の情報で相場が変わる株式の取引には、特に適していることを意味します。

オークション方式には大別して公開型と封印型があります。公開型とは、最低落札価格(例えばゼロ円)から始まり、参加者が競り上げを行うような方式です。公開されている他人の入札額に反応して、自分の入札額を上げるというように、途中で金額の変更が可能です。インターネットオークションの多くはこの形をしています。

また公開型の中には、高い金額から始めて、参加者が「そこで買う」と言うまで金額を下げていく、競り下げ式のものもあります。これは大田花井市場で用いられています。

一方、封印型とは、参加者が入札額を書いた紙を封筒に入れて、主催者に提出するような方式です。いったん提出したら途中で金額の変更はできません。公共事業の落札はこの方式でなされることがほとんどです。

封印型の場合、一番高い入札額を提出した人がオークションの勝者になるわけですが、その支払額の決め方にはいくつか方法があります。勝者に自らの入札額、つまり一番高い入札額を支払わせる方式を第一価格オークションといいます。

そして自分の次、つまり二番目に高い入札額を支払わせる方式を第二価格オークションといいます。例えば二人の参加者がいて、一方が10万円、もう一方が5万円の入札をした場合、10万円の入札をした者が5万円を支払います。

つまり一口にオークションといっても、公開型と封印型があり、それぞれの中にもいくつか方式があるわけです。どの方式がどのような意味で優れているのでしょうか。

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